6年前の予言的中で前日銀総裁白川氏評価爆上げ

2018年6月10日

日本銀行金融研究所は、ほぼ毎年5月末ごろに、海外から中央銀行の幹部や経済学者を招いて、国際コンファレンスを催している。その冒頭の日銀総裁演説に、日銀の問題意識の変遷を見て取ることができる。

例えば、2012年は当時の白川方明総裁が、日本の高齢化や人口減少がインフレ率に及ぼしている影響に言及した。そこには、海外のような2%のインフレ目標を日本で達成することは金融緩和策だけでは困難、という隠れたメッセージが込められていた。欧米でも高齢化や人口減少がこの先進めば、彼らの経済でも物価は上がりにくくなるとの“予言”が示されていた。

異次元金融緩和策の導入から1年後の14年、黒田東彦総裁は政策金利がゼロ%でも金融政策の可能性はなくならず、コミュニケーションを通じた期待形成で経済を動かすことができるとアピールした。演説の「結び」部分では、ドイツの詩人ハインリヒ・ハイネの「どの時代にもそれぞれの課題があり、それを解くことによって人類は進化する」という前向きな言葉が紹介されていた。

ところが、その後インフレ率が大幅に低下し、追加緩和手段にも困るようになった15年には、トーンの変化が見られた。「結び」部分で黒田総裁は、ピーターパンの「飛べるかどうかを疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう」という言葉を引用した。つまり、インフレ2%の実現をみんなで信じることが何より大事、という精神論が強調されたのである。

そして、今年5月30日の黒田総裁の演説では、日本だけではなく欧米の多くの国で、失業率は大幅に低下したのに物価と賃金の上昇が鈍いという「失われたインフレ」「失われた賃金インフレ」が起きていると説明された(白川前総裁の6年前の“予言”が正しかった可能性がある)。かつてみなぎっていた、インフレ目標達成に対する自信は消え去ってしまった。

他方、櫻井眞・日銀審議委員は5月24日の講演で、過度な金融緩和策のリスクに言及した。超低金利の長期化による金融システムの不安定化など、先行きの副作用の顕在化に懸念を示した。現在この問題意識は、追加緩和策を主張している片岡剛士審議委員を除く、他の政策委員8人(黒田総裁を含む)が共有していると推測される。

そのベースとなる分析は、4月に日銀金融機構局が公表した「金融システムレポート」にある。インフレ目標を目指して日銀が超低金利策を続けてきたことにより、コア業務純益(本業のもうけ)が減少した地域金融機関は、これまで有価証券の益出しでそれを補ってきた。しかし、益出しできる有価証券はもうあまり残っていない。

苦しさのあまり、相続税対策の賃貸アパート建設へのローンや、「ミドルリスク」の中小企業への貸し出しを金融機関は増加させてきた(前掲レポートには、賃貸物件の空室率が不気味に上昇しているグラフが掲載されている)。

次の景気後退期にそれらが不良債権化してくると、赤字決算の金融機関が急増し、地方経済に打撃を及ぼす恐れがある。現在の日本の好況は海外経済の順調さに支えられている。海外経済が腰折れする前に金利水準を多少引き上げておかなければまずいと日銀は考え始めているようだ。

しかし、一方でこれほど強烈な金融緩和策を実施しているのに、インフレ率は最近低下している。動くに動けない悩ましさに日銀は直面している。

https://diamond.jp/articles/-/171521

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